

ハレとケ
ハレは非日常、ケは日常。
民俗学者の柳田國男が見出した世界観。
HARETOKEプロジェクトは新型コロナウイルス感染拡大渦中に若年層(主に10代女性)の自死率が増加したことをきっかけに2022年2月にスタートしました。
「ハレとケ」
何事もない日常がみんなに続いていきますように、という願いを込めて選んだ名前です。
HARETOKEは「感じること=感性」を肯定し続けながら、
表現を通して生きる手ごたえを発明しています。
わたしたちの活動理念
〝みんなと違う、同じようにできない〟〝じぶんの居場所がどこかわからない〟〝なぜかわからないけどつらい〟
HARETOKEは、そんな気持ちを無視したり克服しようとするのではなく、寄り添いながら共に生きていこうとしている人たちによって運営しています。
今しんどさを感じている人たちにとって公的な支援が必要なのはもちろんですが、誰かがそばにいてくれること、隠さずに対話ができること、わかってくれる人が近くにいる安心感、知識を持って問題解決の方法を選択できることも大切です。
「頑張れ」「努力しろ」という言葉や、あらゆる問題が自己責任で片付けられてしまう風潮など、様々な背景から生じる「消えてしまいたい」「生きていたくない」という気持ちの否定は当事者をより孤立させ、支援から遠ざけてしまうことがあります。
今のしんどさはあなたのせいではなく、社会の仕組みや過ごしている環境が引き起こしているのかもしれない。
HARETOKEのアトリエは当事者に肯定的な空間を提供しながら、わたしたちみんなに必要な居場所について一緒に考える場所です。
<空間・関係・感性・表現>を自分の方法で見つけて選べること、自分を大切にしていいこと、安全で快適に過ごす権利がみんなにあることを知るための場所です。
アトリエで休憩や遊びの時間を過ごすことで、切迫した行き場のない気持ちに余白をつくり、当事者が感じているしんどさは「自分だけの問題ではない」「自分のせいで起きている問題じゃない」と思えるようになったり、自分の本当の気持ちや感性に気づき肯定的に認めて生きることに繋げます。
当事者同士だからわかること、一緒にできることに寄り添って思考しながら、トライとエラーを繰り返してポジティブな方向へ展開できる方法を探しています。
課題との向き合い方
残念ながら、差別や偏見はまだまだ世界から消えることはありません。社会的な背景から生じるあらゆる福祉課題は、当事者や家族間だけの問題や自己責任と捉えられ表面化しづらく、社会全体の問題として解決に向かい難い状況です。
当団体は、困難を抱える方が望まない孤立や暴力の中で必要な情報が届きにくい環境を選ばざるを得ないこと、自身の当事者性に気づいていないことによって支援に繋がりにくくなっている側面を課題と考えます。
当事者自身と周囲の人々が無意識の差別や偏見に気づき、問題の背景を知ろうとすることや過ごす環境を選ぶことは可能です。
そこでアトリエを誰もが気軽に立ち寄れる「まちの保健室」の役割をする居場所や情報ステーションとして提供することで、直面している課題や困難な状況を整理し、必要な時に公的支援に繋げられたり、利用者が“今“感じている気持ちに重点的に寄り添いながら生きることのサポートを目的にします。
HARETOKEのアトリエは誰かの目から逃げたり怯えて過ごさなくて良い、表現や感性を否定されない場所です。
芸術表現は誰にでも可能で評価を必要とせず、自分自身を守ることもできます。また、権力や圧力に脅かされることに、NOを出せる手段でもあります。
みんな同じであることを選ばず、違いを知ることで自分の感性を引き出し自己肯定の可能性に繋げます。
芸術が担える役割
心は本来、見えにくいものです。
私たちは心を伝える手段のひとつに言葉という道具を持っています。言葉は、簡潔で早く伝えることができて便利です。しかし、受け取り方や伝え方、使う場所次第で、誰かの心を操ったり傷つけたりしてしまうことがあります。また、「楽しい」という言葉を例にすると1000人いれば1000通りの〝楽しい〟があるように、みんな違う価値観で違った印象を受けとれるのも、言葉という道具の特徴です。
道具の上手な使い方を覚えると、ナイスなものをつくり出せるようになります。それから、道具と知恵をたくさん持っていると必要なときに自分や誰かの助けになることがあります。
芸術表現も自分の心や考え方を伝える道具のひとつです。
芸術は見えにくい心の中身を < 色・かたち・音・動き・感触 > で目に見えたり聞こえたり触れられるものに翻訳してくれます。言葉だけでは表現しきれない自分だけの世界をつくることができます。
HARETOKEは上手にできることよりも、自分で考えて、気付き、伝えるプロセスを大切にします。
"感じること(=感性)" 自体が、HAREOTKEがいちばん大切にしたいと考える価値です。
「見たくない・聞きたくない」を「伝えたい・知りたい」に変換する、「美しい・楽しい」と思える感性を自分自身でつくり出す、そして相手を知る豊かさに気付く――こんな可能性を芸術を通して提案します。
HARETOKEが考える芸術表現の可能性
「伝わるって嬉しい」「伝わると安心する」「わからないを受け止める」を体験できる。
言葉にできない「悲しい・寂しい」に寄り添える。
人に言えない(言ってはいけない)言葉をこっそり暗号として表現できる。
傷ついた心の癒しになる。
自分のことが少しわかる。自分のことが好きになれる。人のことが怖くなくなる。
誰かに自分のことを気付いてもらう。
自分と誰かの心を動かし続ける。心が止まる前に助けてもらえる。
心から"好き"と思える感覚を探せる。

運営ポイント
本来、人の思考や表現や感性は自由であって、否定されたり統一されるべきものではありません。
また、自由だからといって誰かを攻撃したり傷つけて良い理由にはなりません。
そこで、HARETOKEは以下のポイントを意識して運営しています。
・ゼロからイチを発明する。
・パーソナリティーや表現への否定や批判を必要としない。そのままを受け止める。
・個々の考えや表現を強制しない、されない。誘導しない。
・他人と自分を傷つけない。
・トラブルはみんなで原因や対応を考える。
・心が動いたときや、知的好奇心は肯定的に捉え発信していく。
・人のセーフティゾーンに踏み込むことはできないが、無関心ではいない。
・誰かが困っていたら気づけて寄り添える心の距離感でいる。
・利用者全員との対等な関係維持を目的に「〜のために」「〜してあげる」という意識は持たない。
・子どもと大人、支援者と利用者、先生と生徒などの立場関係は意図してなくても一方的な力関係を生むことを念頭に。
・「お母さん/お父さん/先生」など社会的ロールでの呼称を意識的に避けながら、呼ばれたい名前で呼び合う。
アトリエのルール
だれかのだいじなもの(からだ・きもち・かんがえかた)
かってにさわらない・こわさない・とらない・よごさない
◉じぶんでかんがえる・やってみる。
◉じぶん と だれか を きずつけることは できません。
◉イヤなこと・がまん は しなくていいです。
◉ひみつ は むりやりきけません。かってにはなせません。
◉ダメなこと・こまったことは、みんなでかんがえます。
◉まよったら たのしいほうを えらびます。
◉しらないことを みつけられたら、それでOK
ルールは みんなで かえてもいいです。